| 武道教育論第1回「武道教育と無意識」 |
格闘Kマガジンの読者の皆さんこんにちは。私はNPO法人日本武道空手道連盟 総合格闘技 空手道禅道会で首席師範 を勤めます小沢と申します。今月号より、現代社会における武道の存在意味や、武道が担わなければならない問題、武道教 育等についての考えを述べさせていただくことになりました。私のつたない文章が、読者の皆さんの生活や人生に、何らかの 参考になれば幸いと考えています。 さて皆さんは、人の心の中には自分では普段意識していない無意識の世界があることをご存知ですか?自分の心は自分で 意識でき、自分でコントロールし、自分の行動は自分で決めていると考えるのが普通なのですが、実は人の心の中には自分で は意識できない深層の心理(無意識)があり、普段行っている何気ない動作や行動、考え方は、これらの強い影響を受けている のです。「そんなことが、格闘技(武道)に何の関係があるんだ?」と、皆さんはそう思うかもしれませんが、例えば試合中、自分 では意識できずに負けを呼び込んでしまうような動きをしているとしたら、どう思いますか?また、試合に限らず、人生における ピンチの場面で、自分の判断がやはり無意識に支配されていて、適切な判断に誤りが生じてしまうとしたら、大変恐ろしいことだ と思いませんか?実は武道をはじめとする東洋の文化は、この無意識を意識が冷静に観察し、どう取り扱っていくのかというこ とがテーマであった、といっても過言ではないのです。 体力の無い者が、体力の優れたものに勝つには、心の構造自体をよく知り,身体と心の関連性を自分自身と向き合うことの 中から、理解していくことが大変重要であり、武道の理念である「柔よく剛を制す」を体現するために必要不可欠であると同時 に、自らの心を成長させるために、もっとも大切なことなのです。 19世紀の末、オーストラリア ウィーンの心理臨床家、皆さんもご存知とは思いますが、あの有名な、ジグムント・フロイトは、 無意識の心理を仮定し、精神分析を提唱しました。フロイトは、フランス留学中、ヒステリーの治療として、催眠療法を学び、患者 の催眠状態を観察して、人の心の中に無意識の存在があることを確信したといいます。催眠状態(意識と無意識のうち、意識の 活動がとても弱まった状態と考えるとわかりやすいと思います。)では、人は自分では意識していないのに、手が動いたり足が動 いたり、また逆に、催眠中に「私が気合を入れるとあなたの足は動かなくなる」という暗示をかけられた場合、実際に催眠から さめた後で、催眠を掛けた人が気合を入れると、本人が意識的に動かそうとしても動かなくなってしまうこと(後催眠暗示)が観察 されたのです。深い催眠中の暗示は意識されないので、本人はなぜ足が動かないのか理解できません。フロイトは、これこそ 意識とは別のもう一つの心の世界があることの証拠と考えました。(触れていないのに相手が飛んでしまうというような武道の中 には、上記のような後催眠暗示を利用したものが多いと考えられます。飛んでしまう人は大変素直に暗示にかかりやすい人で あることが想像できます)またフロイトは一見なんでもないような錯誤行為に、その人の無意識の真相を見ることができるとして います。錯誤行為とは慌てていた時や焦っていた時の、ちょっとした失敗のことを言います。実はその失敗にその人の本当の気持ち (深層の心理)が現れるのです。日ごろの私たちのしぐさや言葉使い、行動は意識的にコントロールされています。心の深層(無意識) は常に意識に抑えられていて、普段は意識には上がってこないのです。しかし、抑える力が弱くなると、思わぬ場違いな言動や動作 が意識にあがってきてしまうことがあるのです。お酒を飲んでかなり酔っ払っているとき、睡眠中,もしくは慌てた時,焦っているとき などは、意識的な心のコントロールが弱まるので、深層の心理が場違いな言動や動作となり、飛び出してしまうことがあるのです。 これが錯誤行為と呼ばれる行動で、間違いに気づくと、人は直ちに意識的にコントロールしてこの間違いを訂正しますが、その人の 本当の気持ち(深層の心理)は最初に間違えた言動や動作に表れているといえるのです。このような例は、日常にもかなり多く見ら れます。もしも彼氏や彼女(友達)が変なことを言ったとしたら、その言動が彼氏や彼女、友達の、真相の心理を表していると考えた ほうがいいかもしれません。ある旦那さんが、うっかり奥さんを、違う于女性の名前で呼んでしまい、浮気がばれて家庭崩壊につな がり、社会的信用を失墜し人生の敗北者となるなどといった例が、これを端的に表していると言ってよいでしょう。(恐ろしい!くれ ぐれも世の男性諸君は気をつけましょう)。 武道もしくは格闘技、その他のスポーツに取り組んでいる皆さん、自分の周りに、練習(稽古)ではセンスも良くやたら強いのに、 試合では力を発揮できないタイプの人はいませんか?このような例は、先ほどの錯誤行為で考えてみると簡単に理解できますが、 その前にもう少し「無意識」について説明してみたいと思います。人間は生まれてから様々な経験や学習を通し、また、言葉の発達 とともに自分という意識(自我)を獲得していきます。しかし、人に起こりうる経験は、その人にとって必ずしも都合の良いものばかり ではありません。そのため、心の成長過程を通して、意識によって都合の悪い経験や体験から生まれた意識を、様々な方法(自我 防衛メカニズム)を用いて、無意識のかなたに置き去りにし、押し込めてフタをし、忘れ去ろうとします。無意識とは、ある意味にお いて、意識(自我)が認めたくない思いや、他人に知られたくない欲求の貯蔵庫と言っていいでしょう。もちろんそれだけではありま せんが・・・。そしてそれらのほとんどが普段意識化される事は無いのです。 [次へ] |
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